中国緑茶について

 
  中国茶の中で最も古い歴史を持ち、現在の中国本土で飲まれているお茶の80%くらいを占有している。 江南地方と長江流域に有名な産地が多いが、 福建省、雲南省など烏龍茶、普洱茶の有名なところでも生産はされている。 宋代までは献上茶は、固形茶であったものが、 明代、洪武帝の時に労力を必要としすぎるという理由から、固形茶が禁止され、以降、緑茶は 散茶の形をとるものが発達してきた。一般に緑茶は不発酵で香りは豆や草にたとえられ、 水色はグリーン系とされている。 ただし、有名な龍井茶は、殺青の前に4時間ぐらい日光の下に置かれるために萎凋とまでは いかなくても、かすかな発酵はされていると思う。 そのため、茶葉は茶色みがかり、香りに甘みがかもしだされるのであろう。 製法は、茶葉を摘んだ後、青殺を行い、発酵を止め、揉捻した後、乾燥させる。 青殺には蒸し煮と釜炒りがあり、前者は日本で普及され、後者は中国での主流である。 なお、日本でも嬉野茶は釜炒りで、中国でも恩施玉露は蒸し茶というように国での線引きはできない。
  中国緑茶という課題なので、とりあえず主流の釜炒り製法について以下は述べ、蒸し煮は省略する。 まず、釜には①水平釜と②傾斜釜がある。①は上級緑茶類に使用され、②は平水珠茶、屯渓珍眉、 秀眉などで使用される。 釜の温度は低いもので碧螺春の70~80度、高い方では黄山毛峰の150度があり、さらに200~300度の 高温で行われるものもある。 火入れは主に3パターンあり、炒る→揉捻→炒るの後、乾燥されるものが炒青。 炒ってから籠に入れ炙り乾燥させるのが烘青で、この方法だと揉捻が行われないので白毫が残る。 2つを合わせたものが半烘青(または半烘炒緑茶)といわれ、望府銀毫や午子仙毫に使われる。 炒青には茶の葉の形が長条形の長炒青(主に眉茶と称されるもの)、珠形の円炒青(主に珠茶と いわれるもの)、やわらかい芽を摘んで炒青する細嫩炒青がある。 細嫩炒青は高級茶になるものが多く、龍井、碧螺春、雲霧茶もこの方法である。 烘青は花茶に使用されるが、細嫩炒青は毛峰系のお茶となり、代表的なのが黄山毛峰、敬亭緑雪である。 以上は散茶に使われる炒青であるが、他に緊圧茶となる曬青がある。 これは炒った後すぐに日光で乾燥するものである。 揉捻は行う方が茶葉内の成分がまんべんなく行きわたり、湯で出し易くなるものの、見た目の美しさでは 白毫の残る毛峰や迎春茶の方が美しい。
  個人的感想だが、味で選べば龍井のように茶色がかっても日光にさらし、揉捻した方だが、 見た目をとると味の方が少し劣っていると思う。 緑茶を入れる温度は低く言われているのでは60度くらい、さらに低いと水出しの方が旨味成分が出るという説まで あるが、香りには欠けるものがあるように思う。 私は中国緑茶は香りも楽しめる90度くらいが一番美味しいと感じている。
(山本 淳子 2002年)