金木犀

アロマリズム

 
    今年(平成20年11月の会刊44号より転載)も中国茶の桂花茶でお馴染みの金木犀の香りが、 あちらこちらでどこからともなく漂って来たのもつかの間のことでした。 毎年、花の咲く時期と台風の重なることが多く、気づくと地面をオレンジ色に染めています。 その台風も今年は思ったよりも少なくいつもより花を楽しむことができました。 改めて見る花は小さいながらにもひとつひとつがしっかりとした存在感のあるものでした。

  金木犀の原産地である中国桂林では、45万本ともいわれる金木犀が植えられていて、 花の咲く頃には街全体がその甘い香りと金色の絨毯に覆われるそうです。 庭木一本で感動している私には中国のその偉大さは想像を超えているようです。

  中国では金木犀を「桂花」と呼び、古くから香りを活かしたものが作られています。 たとえば、花を砂糖漬けにした桂花糖はお菓子の香り付けやお粥に入れたりします。 また、花をつけ込んで熟成させた桂花陳酒は楊貴妃も好んで飲まれていたとか。 最近は日本でも手に入るようになり、気軽に飲めるようになりました。 もちろん中国茶も香りを楽しむお茶としてあり、私の好きなお茶のひとつです。 アロマテラピーでは金木犀の精油はローズよりとても高価でなかなか使うことはないのですが、 機会があったら香水作りに使ってみたい精油です。

  さて、花が終わってしまうといつもの常緑樹として庭木の一部になってしまい、 なんだか寂しい気持ちになってしまいます。 一年に一回たったの一週間だけ「僕はここにこんなに元気に生きていますよ!」 と忘れそうになる私たちにアピールしているんですね。 「私たちも元気にまた一年をおくっていかなくては!」と思いました。

忍田篤子 2008年11月

金木犀