茶的故事 

 安徽茶

 其の三 太平猴魁茶

 
  太平猴魁茶は1900年頃に作られたお茶とされ、1912年に南京南洋勧業会と農商部による陳列良質奨、 1915年のパナマ万国博覧会では金賞を受賞した銘茶です。 また、2004年の国際茶博覧会では、緑茶の茶王と称されたほどの銘茶でもあります。

 主な産地は、安徽省黄山市黄山区新明郷太平湖畔の猴坑一帯の最高峰鳳凰尖(海抜750メートル)辺りです。 黄山は、安徽省の東南部にあり、黄山山脈の主峰です。 山中に奇松、怪石、雲海、温泉の「四絶」(四つの絶景)があり、山水の勝地として世界遺産に登録されています。

  太平猴魁に伝わる幾つかの故事からよく知られている話をひとつご紹介します。 伝説によると、昔黄山に白い毛の猴(猿)がペアで住んでいました。後に子猿が生まれました。 ある日、子猿が勝手に遊びに出かけてしまい、太平県辺りで濃霧に遭い、迷子となり、帰れなくなったそうです。 心配した親猿は、子猿探しの疲労と心労で結局、太平県の山坑(洞穴)で息を絶えてしまいました。

  実はこの洞穴には、野生茶や漢方藥材を採取し生計をたてていた老人が住んでいて、 病死した親猿を山の丘に埋め、お墓の傍に野生茶や花の樹木をも植栽したそうです。 そして、ご老人が墓から離れようとした時に、人影がないのに 「おじいさん私のために、ありがとう! 必ず恩返しをしますね!」と言う声が聞こえたそうです。

  ご老人は空耳と思い、気にかけていなかったのでしたが、翌年春頃に再び一帯を訪れてみると、 茶樹が青々と茂っていました。 そして、また「これは私からのプレゼントです。これで、おじいさんは衣食に困らなくなりますよ!」 が聞こえてきたのだそうです。 そして、老人は神猿からの恵みとして、この一帯を「猴(猿)崗」、住んでいた洞穴を「猴坑(洞穴)」 と名づけたそうです。

  そして、採取された茶葉は「猴(猿)茶」と呼ばれるようになりました。 さらにその後、「坑」を首位の意味を持つ「魁首」の「魁」に入れ替え、茶名を「猴魁茶」に改めました。 近年は「太平猴魁茶」として定着しました。

  現在の太平猴魁茶は、茶葉が碧く、平均7~8センチの長さで、 日本の煎茶のような平べったい茶葉に製茶されたものが一般的です。 先日飲んだ茶葉は、渋みが薄く、味が甘く、香りが清く、教室の皆さんにも大変好評な一品でした。

 楊品瑜 2013.02.20 (転載不可)