茶的故事 

浙江茶

 其の三 九曲紅梅

 
  「九曲紅梅」略して「九曲紅」、別名「九曲烏龍」は、福建省に所縁を持つ紅茶です。 名の由来は言い伝えによると、太平天国の戦乱、福建省武夷の農民たちが戦乱から大塢山一帯に逃れ持っていた良質の茶樹での栽培に成功し、武夷山近くに流れる九曲溪から名づけられたそうです。 九曲渓は武夷山脈主峰「黄崗山」の西から東を通過する約63キロ弱の川です。 最近では、武夷観光での人気スポットで筏下りを行うことでも有名です。 また、紅梅は茶湯が紅い梅のように見えることから例えられました。

  九曲紅梅茶は、主に浙江省杭州西湖区の周浦郷の湖埠、上堡、大嶺、張余、馮家、霊山、社井、仁橋、上陽、下陽などで生産されています。 そして、湖埠の大塢山で生産されたものがもっとも高品質とされ、なかでも雙霊村は代表的な産地のひとつです。 大塢山標高500~600mぐらいの山ですが、山頂が盆地になっていて、地質が茶栽培に適し、四方樹木に囲まれ、雪や風をうまく避けられ、強い日差しも避けられる環境にあるのです。 又、銭塘江の川水の蒸発から霧が発生しやすく、実に茶栽培にもっとも適した環境であったのです。 因みに、西湖は2011年6月に世界文化遺産に登録されています。

  九曲紅梅の茶摘みは、穀雨期前後がもっともよいとされ、やや大きめで柔らかい茶葉がよいそうです。 製法は一芯二葉で摘み、殺青、発酵、烘火と一般的な発酵茶の製法で作られますが、発酵と烘火の行程をもっとも重視しています。 職人や天気で多少違いがあるかもしれませんが、揉んだ茶葉はそのまま布に包まれたまま約一時間置くのが一般的だそうです。 そして、揉む時は一定の方向で揉まないと茶葉が均一にならなくなるので、要注意だそうです。 つまり時計回りで揉む場合は最後まで時計周りで揉む、反時計周りで揉んだ場合は最後まで反時計周りで揉むようにするのだそうです。 そして、布から茶葉を出した後は軽く干し、発酵状況を確認し、火にかけ製茶しています。

  かつては、「清明」(清明節の前)では、大多数の茶葉は名高い「明前龍井茶」作りに使われていたため、同じ時期にもっとも高品質な九曲紅梅の生産量が大大的に減少し、評判をも落とした過去があったようです。 やっと近年、かつて衰退してしまった九曲紅梅茶の茶文化が次々と調べ出され、九曲紅梅の茶文化を見直し、現在では、明前茶、穀雨茶も“九曲紅梅”を作るようになりました。

  九曲紅梅茶が名紅茶であることを伝える100年前の清末民国初の茶缶、包装紙や新聞、雑誌、広告チラシなどもいろいろ保存され、見つかっているそうです。 また、1915年7月6日~8日の《神州日報》による連載では1915年 パナマ太平洋国際博覧会では、参加した7省の中で大賞を取ったとの記録もありました。

  そして、西湖一帯のもう一つの名茶に緑茶の代表格茶「西湖龍井」があります。 地元では紅茶の九曲紅梅茶と並んで“紅綠相配”(紅と緑がよく似合う)と称され、共に愛されている銘茶です。

 楊品瑜 2014.11.10 (転載不可)


九曲紅梅