今年は4月4日が「清明節」。
二十四節気の一つとはいえ、日本に暮らしている我々にとって、正直、馴染みが薄い行事である。
しかし、中国茶、特に中国緑茶好きの「茶迷」達にとってはその「清明」という音にすら
思わず反応してしまう程魅力的なキーワードなのではないだろうか?
「明前」とは「清明節」前に摘まれた茶葉をさし、その後の「穀雨節」前までを「雨前」、後を「雨後」と表し、
時期が早いほど高級な物とされていることは今更言うまでもないだろう。
これらの名称を使う緑茶の一つに、中国浙江省産の「龍井茶」があり、このお茶は、その採取する時期、場所、部位により十数種類と、
他のお茶の類に見ない数の等級分けをされている中国を代表する銘緑茶と言っても過言ではないだろう。
私も今期、「明前雲棲龍井茶」(雲棲は獅子峰を含む西湖龍井の一種)を飲んだが、
その青々とした色、清清しい香気、甘みだけなく、程よい苦味も含んだ滋味、
良く押され美しい扁平を保った外観、まさに「四絶」であり日本茶の上級煎茶に負けない美味しさであった。
皆さんもお試しになりましたか?
さて、本題の「清明節」だが、そもそもは祖先の墓参りをするのが目的とされ、
草むしりをして墓を清める為、「掃墓節」、春を迎えて家族で郊外を散策する習慣から「踏青節」と言われるなど、
どちらかといえば日本のお盆に近い行事のようだ。
今は墓参り後にレストランで食事をするのが主流であるが、かつてはその亡くなった祖先が好きだった物をお供えし、
古銭に似せた紙銭を燃やして祖先を弔い、祖先が寂しくないよう墓前で賑やかに食事をしたとも聞く。
また、これは江南地区が主流のようだが、餅粉の中に野菜汁を入れて緑に染めた餅の中に小豆を入れて丸めて蒸らした「青団」という、
いわば日本の草団子と蓬大福の間のような食べ物を食べる習慣もある。
こういった食べ物や儀式的な事は各地違いはあるようだが、いずれにしても墓参りを目的に親族、
友人が集まることができる貴重な一日であることに変わりはないようだ。
しかし、折角の「清明節」とはいえ、現地においては新茶を片手に故人を弔う…何ていうシチュエーションは余り無いのが現実らしい。
コストの関係上止むを得ない部分もあるとはいえ、実際に新茶の味をいち早く堪能しているのは香港か台湾人かお茶好きの日本人ということに
何とも残念な気がしてならない私である。
陸 千波 2004年4月
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