「夏も近づく八十八夜~♪」この時期になるとTV、ラジオ幅広いメディアから流れてくる、日本を代表する「茶摘唄」である。
何とも明るくテンポが良いので、老若男女幅広い世代で思わず口ずさんでしまう唄の一つと言えるのではないだろうか。
そこで、今回は日中のお茶に関する歌についてちょっと調べてみました。
先ず、中国のお茶の歌の中で有名なものに、「龍井茶、虎跑水」という歌曲がある。
この二番の歌詞を和訳してみると、
龍井の銘茶に虎跑の水
緑茶は清い泉で値打ちが上がる
茶がよく水が良ければ情は更に厚い
深い情けは茶碗に溢れる
世界各地の友達よ!
お茶を一杯どうぞ!
手を繋ぎ、肩を組んで、
お互い助け合いながら前進しよう!
一杯のお茶が友情を広める
その歌声は何処までも
…
と、龍井のお茶と虎跑の水が切ってもきれない関係にあり、それを非常に誇りに思っていることが手に取るように判る。
そしてお茶を通しての「友情」や「助け合い」をテーマにしたいかにも現代中国らしい歌といえるだろう。
しかし、実際茶摘とは大変な肉体労働であり、この過酷さを歌った唄も結構多かったという。
それらの唄の一つに福建省武夷山地区で歌われていた「武夷茶歌」がある。
~(省略)~
茶工は哀れ、哀れなり
三晩に二晩は眠れない
茶の木の下で冷飯を食べ
灯りの下で工賃を数える
と、この唄が作られた時代背景(中華人民共和国建国前)と身分の関係もあるが、何とも哀愁を帯びた切ない内容である。
という日本の唄はここまで悲惨さを歌い上げていない迄も、中国同様そのキツイ労働や茶摘、茶揉みに対する評価への不満を皮肉っぽく歌った民間歌謡が割りと多いようだ。
その内容については、スペースの関係上割愛させて頂くが、
静岡県金谷町のお茶の博物館叢書の森薗市ニさん著の「お茶の唄々」の中で日本の茶産地で歌われていた唄が色々と紹介されているそうである。
何はともあれ、これらの労働を考えるとお茶の値段が高いのもうなずける話である。
益々有難く頂かないと。
しかし、中国においては未だ手作業が主流ではあるが、日本、台湾においては大量生産の為に作業が機械化され、このような茶摘唄が生まれることも少なくなったようだ。
有難くもあり、寂しくもあり…であろう。
陸 千波 2004年5月
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