2005年2月9日は旧暦のお正月、「春節」の初一(元旦)である。
日本にいるとこの日は何と言う事もなく過ぎていってしまうのだが、
今年はワールドカップ予選で日本vs北朝鮮戦があるということで日本中が活気に溢れていた。
さて、この春節だが、過ごし方は各地、各家庭で様々である。
代表的なのは、家の門や入り口に「春聯」(チュンリェン)という縁起の良い言葉が書かれた赤い短冊状の紙を対にして貼ったり、
綺麗な切り紙「剪紙」(チェンツゥー)を窓に貼ったり、
「福」という文字が入った正方形の紙を逆さまにして入り口に貼る習慣である。
この逆さまの福は「福倒了(福が逆さま)」と「福到了(福が来た)」の発音が同じ事から縁起を担いで始められた、
いかにも中国らしい楽しい習慣と言えるだろう。
そして、日本でいう大晦日の晩には「年夜飯(ニエンイエファン)」と言って、北方では餃子、南方では長寿を願い、
「長寿麺(ツァンスォウミエン)」と言われる長い麺類や
「長年菜(ツァンネンツァイ)」と言う長い青菜野菜を切らずに鍋(中国語では火鍋という)にいれ、
「団圓」という家族賑やかに食べながら新年の訪れを祝うのであるが、
近年都市部においては街中のレストランを予約して年夜飯を食べる家庭も多い。
この餃子を食べる習慣だが、その形が昔の貨幣「元宝」の形に似ていることから財を呼寄せる縁起の良い、
新年を迎えるには相応しい食べ物だからということもあるが、
餃子を包む作業をしながら皆で話をし、その幾つかの餃子の中に硬貨や当たりとなる食べ物を入れ、
それを食べた人がこの一年金運に恵まれるとい運ためしである。
実際、私が北京郊外の農村で春節を過ごした時も餃子の中に赤い生姜のような物を入れ、
皆で誰が当たりかと和気藹々楽しんだものである。
そして、都市部では禁止されている爆竹を鳴らしたり、
日本の紅白歌合戦のような「春節聯歓会」を見たりしながら家族の一員のように団欒を味わった。
ちなみに、私は未だ味わった事がないが、中国の一部の地域では春節に特別なお茶の飲み方をする所があるようである。
一つは江南地方の風習で橄欖茶(オリーブ茶)に縁起を担いで「元宝茶」というものだが、
春節の間に来客したお客様に湯飲みに二個のオリーブと高級緑茶を入れ、湯を注いで作るお茶である。
先にも触れたが、このオリーブが古銭「元宝」に似ていることからお客様にとって「新年もお金が儲かりますように」と
祈りつつこのお茶を淹れるそうである。
とても嬉しい心配りだが、さて、味はどうだろう?
又、貴州省の侗族居住地においてもオンドルの中央に赤い漆の盆に乗せた茶菓子を置いて、
その周りを家族が囲み、長老者からの祝いの言葉を聞いたり、お喋りをしたりしながら鼎に入ったお茶を一杯ずつ飲む、
「年茶」という習慣もあるそうだが、この話は不明な点が多いのでもう少し詳しく調べてみたいと思っている。
以上、中国の春節の話を紹介したが、日本のお正月にも飲むお茶がある。
私が年初に出勤した際、年始の挨拶で頂いた「大福茶」がそれである。
とある方が嬉しそうに「ダイフク茶が来ましたよ~」と言っていたので思わず笑ってしまったが、
正式には「オオブク茶」と読むのである。
そもそもこの「大福茶」とは天暦5年(951年)に京の街で蔓延した疫病を退散させる為、
朝廷から六波羅蜜寺の空也上人が祈祷を命じられ日夜懸命に祈祷するものの少しも鎮まる事がなく、
祈祷と共に梅干を添えたお茶を人々に施した所疫病が小康状態に向かった事から、
これをあやかり村上天皇が毎年正月の元旦にお茶を飲むようになった為、
これを「王服茶」と呼んだが、庶民の間でも正月だけでもお茶を飲む習慣ができるようになり、
「大福茶」と呼ぶようになったのである。
この習慣は今でも京都を中心に色々な地方で残り、元旦に若水の湯に梅干や黒豆、山椒などを入れて飲み、
その年の邪気を払うそうである。
ただ、面白いのが節分の豆まきの後「大福茶」を飲む地方もあるそうで、ブレンドするものもその地方で様々とか。
調査したら楽しそうである。
ちなみに会社で頂いた「大福茶」は赤い和紙に包まれいかにも縁起の良さそうなパッケージで、
お茶は抹茶入玄米茶に黒豆がごろごろ入った香ばしい味。
お茶の質より縁起で勝負といった所だろうか。
節分の豆まきで邪気払いもしたし、益々幸多い一年になるかな?
春聯について
「桃符」から変化したのが春聯です。
桃符は古代の門神を板に描いたもので、家の門の両端に貼っていました。
南北朝から唐朝の頃におめでたい対句を紙に書くようになり、
のちに「春」と「福」の一字のみを書いて逆さに貼る風習が起こりました。
春聯の文字は赤い紙に墨で書きますので、俗称として「紅紙」(ホンツゥー)とも言います。
陸 千波 2005年2月
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台湾の新感覚 「春聯」
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