茶イナよもやま話(その13)

 

  2005年3月8日~11日千葉・幕張メッセにて 「FOODEX JAPAN2005」 が開催された。 会場は私の自宅から程近いものの、FOODEX は基本的に商談の場ということで、子供の同伴は禁止されている。 そこを何とか工面して、最終日の閉館1時間半前にぎりぎり滑り込んで幾つかのブースを視察してきた。 印象に残ったものは幾つかあるが、その中でも一番今回の収穫だったと思われたものを紹介したいと思う。

  それは、日本茶の 丸山製茶株式会社 さんで 展示されていた花粉症の方必見の 「ベトナム産四季春烏龍茶」 である。 私自身、重症ではないものの毎年花粉症に悩まされているので、 去年辺りから花粉症に効果があるといわれるメチル化カテキンの含有量が高い静岡市丸子産の「紅富貴(べにふうき)」の 動向が非常に気になっていた。 巷では今年は花粉の飛散量が例年の2~30倍と、マスクやゴーグル、スプレー類など花粉症対策グッズ花盛りである。 ただ、お茶に関しては甜茶、凍頂烏龍茶等の紹介はあるものの生産量が追いつかない「べにふうき」は お茶通のみが知る、未だ市場には余り出回っていない希少価値の高いものという感がある。

  そこで「べにふうき」の紹介をしておくと、 このお茶は 独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所 の 金谷茶業研究拠点 において、 1993年にアッサム雑種の「べにほまれ」とダージリンからの導入種 「枕Cd86」 を交配させて紅茶、半発酵茶用に 育成されたものである。 この「べにふうき」の成分を調べてみると、強力なアレルギー抑制作用があるといわれるメチル化カテキンの含有量が多い ことが判ったが、このメチル化カテキンは発酵させると無くなってしまうとのことから、 紅茶用品種ながら、全発酵の紅茶ではなく、不発酵の緑茶として作られるようになったそうである。 野菜茶業研究所のホームページをリンクするには手続きが必要なので、ここではリンクしませんが、 有益な情報がありますので、一読されることを薦めます。

  私も昨年お茶関連のイベントで少量ながら購入した「べにふうき」を飲んでみた所、やはり釜炒りとのこともあり、 イメージ的には日本の緑茶というよりは中国の緑茶の味に近い軽い味わいで、 美味しいが、カテキン特有の苦渋みの強いお茶であった。 まさに「良薬は口に苦し」の味わいだろうか?

  それに対し、今回の「ベトナム産四季春烏龍茶」は元々は台湾で評判の高い「四季春」という品種の烏龍茶を 多少コストの安いベトナムで同じような条件下で栽培し、成分を調べてみた所、メチル化カテキン量が思いがけず多かったと いう偶然の発見だったそうな。 ちなみに丸山製茶さんの商品データによると、「ベトナム産四季春」100g 中に含まれるメチル化カテキンは 690mg で 同社の「凍頂烏龍茶」(ティーバッグ)320mg の約2倍だとか。 熱湯で約1分間の蒸らし時間、つまり一煎目で、メチル化カテキンはほぼ全部抽出されてしまうそうだが、 その含有量の多さから、「べにふうき」に続く花粉症対策茶としてお勧めの品のようである (勿論、他にもお勧めの日本茶が沢山ラインナップされています)。

  実際に私も閉館ぎりぎりと言う事で強引に購入させて頂いたが、 茶葉がブロークンタイプ(砕葉型)に近いティーバッグではあるものの、 二煎目以降も味はしっかり、香りも良く、苦渋みも強くない、と飲みやすく美味しいお茶だった。 残念なのは関東の店舗ではまだ販売されておらず、ネットや通販を通してのみ購入できること。

  ちなみに、何故ベトナム産が他の地域で製造される「四季春」よりメチル化カテキンの含有量が多いのか 質問させて頂いたが、はっきりした理由はまだ判っていないようである。 ただ、ベトナムが赤道に近い平均気温の高い地域という事で、他の地域よりカテキン量が多いのでは? (一番茶より二番茶の方がカテキン含有量が多い事と同じか?)とか、 製造工程上ベトナムでは発酵状態が弱い為含有量が多いのでは? というように解釈されているようである。

  ここで紹介したお茶は丸山製茶さん以外にも 「お茶の里城南」 さん等でも 購入できるようだが、価格の違いは輸入ルートやお茶の葉がリーフに近いか粉茶に近いかといった所から生じるものらしい。

  花粉症シーズン真っ只中。 私もシーズン前から大好きな凍頂烏龍茶を淹れて飲むようにしていたが、 最近この「ベトナム産四季春烏龍茶」にスイッチした所である。 さてその効果はいかなるものか?  ただいま夫婦揃って身をもって体験中である。

陸 千波 2005年3月