『OZONE夏の大茶会2004』 へ行って来た。
6日間という開催期間中、お茶の名前がつくことなら何でも!と言うほど数々のイベント、出店が行われ、
私も「毎日でも行きたい!」という湧き上がる欲望を抑え、一日だけ「世界に広がる茶の心」という各界の
専門家の方達によるセミナーに参加することにした。
このセミナー、どれもこれも興味をそそる内容ばかりだったが、聞き終えて何処か気になって止まない
キーワードがあった。
《お茶の泡》である。
普段、茶柱は気にしても、お茶の泡に注目することは余り無い気がする。
これが、所変われば色々な捕らえ方があるようで興味を惹かれた。
先ず、モロッコを代表するミント緑茶「モロカンティー」であるが、
これは「ガンパウダー」こと、中国産の緑茶「珠茶」という、まるで拳銃の弾のように
黒光りし、丸よれした緑茶の茶葉と香りの強いモロッコ産のフレッシュミントと
角砂糖を銀製のポットに大量に入れ、湯を注いで抽出したものをいう。
ここで面白いのが、ポットで蒸らしたお茶を2回程グラスに注ぎ、またポットに戻し、
高い位置から空気が良く混ざるように注ぐ点である。
このときに泡立つ泡が「ターバン」と呼ばれるそうで、非常に大切だという。
このモロカンティーは甘味も結構強いが、渋みも強いのが特徴のようで、
このターバンが多いほど空気を含み、味がまろやかになるらしい。
つまり、泡が美味しさの一つの目安とも言えるであろう。
この感覚は紅茶や中国茶にも共通することのように思う。
実は、中国茶もかつてはアクを味のうちととらえ取り除かなかったが、
最近は日本の煎茶道の影響で取ることもある。
何はさておき、このモロカンティーは甘いことは甘かったが、
暑い日に飲んだこの一杯は喉越し爽やかでなかなか美味だった。
ちなみに、このミントの成分は体温を下げるのに効果があるそうで、
モロッコの人々も一日に何杯ものモロカンティーを飲む事で暑い夏を
乗り切っているようである。
次に、日本の「振り茶」についてだが、この振り茶は、
主に煮出した番茶をササラや茶筅の先に塩を付けて泡立てて、
何か具を入れて「飲む」というよりは「食べる」お茶である。
有名なものに、富山県の「ばたばた茶」、香川県の「ぼて茶」、
島根県の「ぼてぼて茶」、そして沖縄県の「ぶくぶく茶」等がある。
ここで何故泡を立てるのかだが、静岡産業大学の中村羊一郎先生によると、
例えば「ぼて茶」のように泡の上に「香煎(麦焦がし)」をのせて食べるものは、
香煎が喉に張付いて食べ辛いので、泡をオブラート代わりにくるんで食べやすく
する為だったのでは?という話があった。
確かに大変合理的な生活の知恵である。
また、ほかの推測では、日本の茶の湯、お抹茶に憧れたが、
とても高価で手が届かないので、番茶で代用して泡を立てるようになったという話も
あるらしい。
これも何となく納得してしまう話ではないだろうか。
ちなみに、このお抹茶も流派により泡の価値観が違うそうである。
例えば、薄茶は裏千家では茶碗の底から泡立っているような泡の多いもの程
攪拌され美味しいと考えるようだが、裏千家では泡が少なめだとか。
最後に後発酵茶のペットボトルの紹介の際、
茶の成分の一つである「サポニン」の起泡性に注目して、
ミキサーで泡立たお茶のカクテルも紹介されていた。
ペットボトルを持ち歩いていると直ぐに泡だってしまうのが嫌だなと思うことも
幾度かあったが、それを逆手に取り、お抹茶のように、ティーフロートのように、
振り茶のように楽しむのもお茶の一つの楽しみ方だなと、
お茶の泡の価値について再認識した一日だった。
陸 千波 2004年8月
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