茶的故事 

 台湾茶

 其の二十八 松柏長青茶

 
  南投県名間郷(旧称湳仔)は原住民の狩猟場でした。 雨のたびに窪地が沼と化す開拓困難な地であったため、湳仔と呼ばれたのです。 南投、彰化両県に跨っている人気の観光地八卦山山脈の最南端に位置しているのが、松柏嶺(旧称埔中)です。 八卦山は原名「 寮望山(または望寮山)」、または定軍山と呼ばれていました。

  清の時代に台湾人民の生活が悲惨として「天地会」が組織され、 その支部の「八卦会」がこの一帯に組織されました。 これが八卦山の地名の由来となったそうで、清乾隆年間の文献に「八卦山」の名称が使われています。 彰化県側にはアジア一の大きい黒色の大仏「釋迦如來佛」があることでも知られています。

  松柏嶺一帯の茶業開発は台湾においては早い方でした。 当時は国内向けの一部に限られた販路での販売でした。 このため、「埔中茶」または「松柏坑茶」とも呼ばれていましたが、知名度は低かったのでした。 後に、視察に訪れた故総統蒋経国が行政院長だった時代の1975年に「松柏長青茶」と命名し、 よく知られるようになりました。政府主導の「松柏長青茶」復興計画が作られ、 機械化に多くの予算が用意され、技術の向上が図られました。 これによって、均一した品質の茶が生産できるようになったのが評価されたそうです。 近年では台湾十大銘茶の一つと称されています。

  松柏嶺は丘陵地形のため、多くの茶畑は海抜200~400mの台地に分布しています。 また年間日照は十分にありますが、山麓の東側に茶畑が集中しています。 平均気温は同じ南投県の銘茶凍頂茶の産地、鹿谷郷よりやや高く、茶園も標高が低いのですが、 土は台湾では茶栽培に最適とされる赤土です。 四季春茶の栽培では4回茶摘みが行なわれています。 交通網もよく整備されていますので、気温を除いた条件では茶栽培に最適な条件は整っています。 また、茶園は多くの檳榔樹に囲まれ、インドなどの茶園のようなシャドーツリーの役目のように思えましたが、 元々自然に生えていたものだということです。とにかく緑がいっぱいで、南国情緒豊かな景色が癒してくれます。

  八卦山風景区内の「松柏嶺遊客中心」では製茶の歴史、種類、製茶過程及び茶食としての茶料理などが楽しめます。 また、昔ながらに堆肥と雑草の生長防止のためにピーナッツの殻を茶畑の表面に散布しているそうで、 まだこんな習慣があるのだと感慨を覚えました。

  かつて国防のために松柏嶺地区に二十七箇所に碉堡(トーチカ)が作られていたことから、 歴史と茶を融合させた「2006名間茶郷觀光碉堡文化巡礼」という行事が開催されました。 各碉堡を廻り、爆竹を鳴らし、牛車巡礼、茶摘みの舞、品茶会(茶の試飲会)などで、 観光事業に一役買ったそうです。

  入手した松柏長青茶のパッケージも一般的なものでしたので、茶葉の写真を載せてみました。 また、檳榔樹は茶園に生えている写真がなかったので、付近の檳榔樹畑を参考のために載せました。

 楊品瑜 2006.10.10 (転載不可)


松柏長青茶の茶葉






檳榔樹