茶的故事 

 台湾茶

 其の三十三 冬山素馨茶

 
  宜蘭県冬山鎮には冬瓜に似た小山があり、かつては冬瓜山と呼ばれていました。 戦後は「冬山」と名が変わり、フルーツの蓮霧、文旦、梨や椎茸、素馨茶の産地として知られています。 山麓一帯は風光明媚で、梅花湖、仁山苗圃、中山瀑布、新寮瀑布(滝)、中山苗圃(びょうほ、草木の苗を育てるための畑)が主な観光地です。

  冬山素馨茶は主に武荖坑で産出されており、かつては武荖坑茶と呼ばれていました。 武荖坑は宜蘭県新城溪の俗称で、古くは「武荖林泉」とも呼ばれていた「新蘭陽八景」の名勝です。 武荖坑は宜蘭県の冬山郷と蘇澳鎮を分ける渓流で、渓谷には多くの砂金が含まれ、 かつてはゴールドラッシュに沸いたそうです。 しかし、大金の私財を投げ打って失敗した人も大勢いたといわれています。

  武荖坑茶区の茶樹は青心烏龍、青心大冇、武夷の三種類が主でしたが、近年は金萱種も多く栽培されています。 主に半球型の包種茶に製茶されています。 太和、中山、大進一帯の標高500メートル以下の西側に茶園が集中しています。 日照時間がやや短いのと早朝に霧が多く発生することから、柔らかく、まろやかな茶葉ができるとされています。

  民国73年(1984)7月10日に宜蘭県主催の農産品の品評会で、 当時の国民党秘書長の蔣彦士によって「冬山素馨茶」と命名されました。 近年、農協では茶葉の品質向上のために茶区の水や土の保持を行なったり、 新品種の導入や製茶機械の補助を行なったりして、茶葉生産専業区を整備したそうです。

  2001年には中山村を主体に、大進村、丸山村、八宝村で中山休閒農業区面積806ヘクタールに茶樹と果樹を植え、 茶葉のほかに文旦を多く生産しています。 2004年示範区(モデル特区)に選ばれています。 中山休閒農業区では、レストラン、農場、観光果実園、民宿があります。 「茶香」や「柚香」をテーマにさまざまな行事や商品が開発されています。 例として賞柚花(柚子花の鑑賞会)、喝柚花茶(柚花茶を飲む会)、採茶、製茶、茶月餅などです。 文旦は柚子の一種で、文旦柚ともいいます。 文旦と言われるのは柚子が日本の九州に伝わった時の中国船の船長 謝文旦に由来しているからだそうです。 ちなみに中国語の柚子の和名はザボンですが、日本の柚子は中国語では香橙と訳されています。

  ここ数年、冬山郷の農協では新たに米と台湾産不発酵の緑茶の生産にも力を注いでいます。 緑茶は主に翠玉や金萱の茶樹から作っており、主な輸出先は東南アジアです。 ティーバッグにしたものが人気で、そのパッケージは特許申請もしているそうです。 入手する機会がありましたら、またご紹介したいと思います。

 楊品瑜 2007.12.05 (転載不可)