茶的故事 

 台湾茶

 其の三十六 蘭嶼山馬茶

 
  台湾の離島蘭嶼島に生える蘭嶼山馬茶は学名Tabernemontana dichotoma Roxb. 英名Banana Bushと呼ばれる夾竹桃科(キョウチクトウ科)の植物です。 三友花、革山山馬茶、蘭嶼馬蹄花、南洋馬蹄花、山茶とも呼ばれる希少な植物です。 原産地はインド、ミャンマー、マレーシアとされ、フィリピンや台湾の恒春と蘭嶼地区に自生しています。

  名前に茶が付いた理由ははっきりとしませんが、茶葉はつばき科の茶葉に酷似しています。 花のつぼみから咲いた様子はジャスミンの花によく似ているたに、梔子花(くちなしの花)ともよく間違われます。 このため、英名ではCrape Jasmine Tabernaemontanaとも呼ばれていますが、 植物学的にはジャスミンは木犀科(モクセイ科)です。 一部の農家ではよく干した花びらのみを使って、香片(ジャスミン茶)につかうことがあるそうです。 花びらは種類によって単瓣(一重咲き)と重瓣(八重咲き)のものがあります。

  山馬茶の樹木は1~2メートルで、盆栽や観賞用植物としても珍重されていますが、花と葉は有毒です。 葉をちぎったときに白乳が出てきますが、素肌でこの汁に触れるとかぶれます。 台湾では使い方を間違えると嘔吐、腹痛、下痢を起こす毒を持っているとしても知られています。 しかし、根や茎は解毒効果があるとして、生薬として煎じて茶外茶として飲むことができます。

  近年の研究では甲状腺腫の治療、降圧効果や抗癌作用などの薬効があるとして注目されています。 何せ強い毒性を持つ植物でもありますので、医学的な扱い方には専門家の間でも意見が分れています。 個人の判断では飲まないように気をつけてほしいです。 台湾の本島や中国福建省、安徽省などで挿し木や高圧法での栽培が行なわれ始めています。

  蘭嶼は台湾本島から東方沖に約65キロメートル離れた海上にあり、面積は約46平方キロメートルの火山島で、 行政上は台東縣蘭嶼郷となっています。 かつては紅頭嶼と呼ばれていましたが、蝴蝶蘭の生産が有名ということから、 1947年に国民政府によって蘭嶼と改められました。 蘭嶼へのアクセスは台東から飛行機と船の定期便を利用できます。

  島の周囲は珊瑚礁に囲まれ、年中ダイビングができるほど海流が穏やかで、 水の透明度は30メートルに達する台湾一のダイビングスポットです。 また、魚の回遊も多く魚釣りにも最適な漁場です。

  島は原住民雅美族が多く住み、フィリピンとの交流が盛んだったようです。 漁人村、紅頭村、椰油村、朗島村、東清村及び野銀村の6つの村に分れ、 各村の長老や村長がすべての行政事務を担当しているそうです。 雅美族は達悟族(Tao)と呼ばれていましたが、光緒23年(1897)に日本人の鳥居龍藏が初めて島に入り、 島民を雅美族(Yami)と報告したことで付いた名称です。 今日も行政上も雅美族とされていますが、原住民はTao(達悟人)と自称しています。

  産業は農業と漁業が主です。 女性が農業を、男性が漁業を担当し、男性は魚をさばくところまで担当しているそうです。 また、養豚や山羊の放牧なども行なわれており、ほぼ自給自足の生活を送っています。 蘭嶼の雅美族は、台湾の原住民の中で、アルコールを作る技術を持たない唯一の民族とされています。 気候が暑いせいか、地元のレストランなでは甘い冬瓜茶が人気だそうです。

  1895年の下関条約後、台湾を領有した日本は蘭嶼島に原住民の人類学的な研究区を設立し、 一般人の入島を禁じたことにより、現在も自然が豊かで、独特の珍しい動物も多いのです。 また別名「風島」と呼ばれるほど風がよく吹き、台風も多く通過します。 従って、建物には1部屋は必ず地面より低く作る工夫が行なわれています。 伝統的な家には門がなく、以前は観光客が知らずに敷地内に入り込んで写真を撮るというトラブルが多く起きていました。 蘭嶼島での茶文化については更なる取材が必要ですが、 伝統文化と現代社会との狭間にゆれている蘭嶼島は今後も静かに見守っていきたいと思います。


付記 今回紹介した蘭嶼山馬茶は台湾では治療を主とした時に飲む茶外茶ですので、当教室では飲むことができません。


 楊品瑜 2008.04.15 (転載不可)